少年探偵団のリライトものについて、そしてクリエイターへ

江戸川乱歩著『少年探偵シリーズ』ですが、現在では流通されないリライトものが存在します。現在流通しているのは全26巻。つまり27巻以降の作品がそれにあたります。自身もまだコンプリートはしていませんしすべてに目を通してはいません。まだまだです。

リライトものとは要するに江戸川乱歩の著作の中でも所謂通俗ものと呼ばれる小説を児童向けに書き直した作品で元々は『日本名探偵文庫』というシリーズで刊行された後、おなじみ旧ポプラ版装丁の少年探偵シリーズ27巻以降の形で出版されるようになりました。

特徴としては通俗小説のストーリーラインを改変しつつ(殺人描写などは普通に登場します)主要な登場人物の名前を少年探偵シリーズのものに置き換えています。

名義は江戸川乱歩となっていますが、すべて他者による代作です。そのため、全集に収録されることもありません。存在そのものがアウトサイドというかイレギュラーなので現在ではちょっとしたマニアが稀に話題に出す程度かと思います(そもそも乱歩研究において少年探偵シリーズそのものが軽視される傾向ですしね)。

 

一つ誤解されやすいのが(いや誤解といえばリライトもすべて江戸川乱歩本人が書いているというそもそもの超大誤解もかなり根深いのですが)27巻以降のリライトは江戸川乱歩死後に書かれたという誤ったイメージです。

確かに旧ポプラ版のシリーズとして出版されたころには乱歩本人は故人となっていましたが、すでに書いたように『日本名探偵文庫』というシリーズで刊行されていたリライトものは普通に乱歩存命中に書かれ、出版されています。

リライトものが江戸川乱歩の死後に書かれたという認識は誤りです。

 

メディアミックスには口を出さず版権申請も許諾し、名義貸しも快く引き受けた江戸川乱歩ですが、一つ物言いをつけた作品があります。それがリライト版『大暗室』です。

リライトものの隠れた特徴として、実は江戸川乱歩名義での序文(「はじめに」という書かれ方です)が挟まれています。これは『日本名探偵文庫』刊行時からの特徴で、旧ポプラ版になってからもこの序文は残っています。この挨拶も乱歩本人のものではないと思うのですが(ここはちょっとわかりませんでした)基本的に序文における乱歩先生は「この作品が代作であること」は一切触れていません。

それが、一つだけ(※)「他人の手によるものである」とはっきり明言している作品があります。『大暗室』のリライトです。これだけは「他者にお願いして、書き直してもらった」という形で「自作ではない」ことに公に言及しています。

 

その理由はおそらく、怪人二十面相が殺人を犯すからです。

 

世のクリエイターが乱歩メディアミックスを手掛けるとき、不殺の大怪盗・怪人二十面相を殺人鬼に改変する意図はわかります。得られる効果は理解できるからです。乱歩作品の著作権も数年前にすでに失効しました。法の上で何も問題はありません。それが文化の生き残りです。

ただ、私は下品だなと思います。思うだけです。

 

 

 

※といって、最初のほうに書いたようにリライトものをすべて入手し確認したわけではないんですけどね