わんぱく探偵団を視聴して

Gyaoで配信されていた『わんぱく探偵団(虫プロダクション)』を全話視聴しました

ja.wikipedia.org“原作は、江戸川乱歩の子供向け探偵小説シリーズ『少年探偵団』。6人の少年少女によるわんぱく探偵団が、私立探偵明智小五郎とともに推理力と行動力を駆使して難事件に立ち向かい、怪人二十面相と対決する模様を描く。虫プロでは初の、手塚治虫作品以外をもとにして制作されたアニメである。 ”

 

Gyaoの古典アニメ枠でたびたび全話配信されているらしく、前回配信の際は途中でドロップアウトしてしまったので今回初めての全話視聴です。

 

※編集中

青空文庫の『少年探偵シリーズ(江戸川乱歩)』を順番にリスト化してみる

2016年に作品の著作権が失効した江戸川乱歩

おなじみ青空文庫でも多くの作品が並び、特に少年探偵シリーズは全作品投稿済となっています。こちらのリストはまさにそのファイルを入力されたご本人が公開しているものをそのまま参考にして該当のタイトルにリンクをつけるという形にしました。

e-freetext.net

 

リスト

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図書カード:怪人二十面相

  初出:「少年倶楽部講談社/1936(昭和11)年1月号~12月号

 

図書カード:少年探偵団

  初出:「少年倶楽部講談社/1937(昭和12)年1月号~12月号

 

図書カード:妖怪博士

  初出:「少年倶楽部講談社/1938(昭和13)年1月号~12月号

 

図書カード:大金塊

  初出:「少年倶楽部講談社/1939(昭和14)年1月号~1940(昭和15)年2月号

   ※戦前に発表された「少年探偵シリーズ」最後の長編

 

図書カード:青銅の魔人

  初出:「少年」光文社/1949(昭和24)年1月号~12月号

  ※戦後に発表された「少年探偵シリーズ」初の長編

 

図書カード:虎の牙(『地底の魔術王』の題のものも)

  初出:「少年」光文社/1950(昭和25)年1月号~12月号

 

図書カード:透明怪人

  初出:「少年」光文社/1951(昭和26)年1月号~12月号

 

図書カード:怪奇四十面相

  初出:「少年」光文社/1952(昭和27)年1月号~12月号

 

図書カード:宇宙怪人

  初出:「少年」光文社/1953(昭和28)年1月号~12月号

 

図書カード:鉄塔の怪人

  初出:「少年」光文社/1954(昭和29)年1月号~12月号

 

図書カード:海底の魔術師

  初出:「少年」光文社/1955(昭和30)年1月号~12月号

 

図書カード:灰色の巨人

  初出:「少年クラブ」講談社/1955(昭和30)年1月号~12月号

 

図書カード:探偵少年(『黄金の虎』の題のものも)

  初出:読売新聞/1955(昭和30)年9月12日~12月29日

 

図書カード:天空の魔人

  初出:「少年クラブ」増刊、講談社/1956(昭和31)年1月15日

  ※ポプラ社版では下記掲載の『妖星人R』との併録

 

図書カード:魔法博士

  初出:「少年」光文社/1956(昭和31)年1月号~12月号

 

図書カード:黄金豹

  初出:「少年クラブ」講談社/1956(昭和31)年1月号~12月号

 

図書カード:妖人ゴング

(『魔人ゴング』の題のものも)

  初出:「少年」光文社/1957(昭和32)年1月号~12月号

 

図書カード:魔法人形(『悪魔人形』の題のものも)

  初出:「少女クラブ」講談社/1957(昭和32)年1月号~12月号 

 

図書カード:サーカスの怪人

  初出:「少年クラブ」講談社/1957(昭和32)年1月号~12月号

 

図書カード:まほうやしき

  初出:「たのしい三年生」講談社/1957(昭和32)年1月号~3月号

 

図書カード:赤いカブトムシ

  初出:「たのしい三年生」講談社/1957(昭和32)年4月号~1958(昭和33)年3月号

 

図書カード:奇面城の秘密

  初出:「少年クラブ」講談社/1958(昭和33)年1月号~12月号

 

図書カード:夜光人間

  初出:「少年」光文社/1958(昭和33)年1月号~12月号

 

図書カード:塔上の奇術師

  初出:「少女クラブ」講談社/1958(昭和33)年1月号~12月号

 

図書カード:ふしぎな人

  初出:月刊誌「たのしい二年生」(大日本雄弁会講談社講談社)に1958(昭和33)年8月から1959(昭和34)年3月号まで

  さらに「名たんていと二十めんそう」と改題されて月刊誌「たのしい三年生」(講談社)に1959(昭和34)年4月から12月まで連載

 

図書カード:仮面の恐怖王

  初出:「少年」光文社/1959(昭和34)年1月号~12月号

 

図書カード:鉄人Q

  初出:「小学四年生」1958(昭和33)年4月号~1959(昭和34)年3月号までと、さらに「小学五年生」1959(昭和34)年4月号~1960(昭和35)年3月号

 

図書カード:かいじん二十めんそう

  初出:月刊誌「たのしい二年生」(講談社)に1959(昭和34)10月から1960(昭和35)年3月まで連載

 

図書カード:かいじん二十めんそう(上記同題ですが違う話です)

  初出:月刊誌「たのしい一年生」(講談社)に1959(昭和34)11月から1960(昭和35)年3月まで

  さらに月刊誌「たのしい二年生」(講談社)に1960(昭和35)年4月から1960(昭和35)年12月まで連載

 

図書カード:電人M

  初出:「少年」光文社/1960(昭和35)年1月号~12月号

 

図書カード:おれは二十面相だ

(『二十面相の呪い』の題のものも)

  初出:「小学六年生」/1960(昭和35)年4月号~1961(昭和36)年3月号

 

図書カード:怪人と少年探偵

  初出:「家の光」(家の光協会)付録「こども家の光」に1960(昭和35)年9月から1961(昭和36)年9月まで連載

  1961(昭和36)年5月には著者病気により休載と告知あり

 

図書カード:妖星人R(『空飛ぶ二十面相』の題のものも)

  初出:「少年」光文社/1961(昭和36)年1月号~12月号

  ※ポプラ社版では上記掲載の『天空の魔人』と併録

 

図書カード:超人ニコラ(『黄金の怪獣』の題のものも)

  初出:「少年」光文社/1962(昭和37)年1月号~12月号

 

図書カード:自作解説(副題として『怪人二十面相と少年探偵団』)

  初出:「児童文学への招待」南北社/1965(昭和40)年7月

  ※見てわかる通り作者によるエッセイです

 

 

 ……

以上です。

つけくわえれば、シリーズ最終巻である『超人ニコラ』は作者執筆最後の小説でもあり、その後、1965年(昭和40年)7月28日に江戸川乱歩は亡くなっています。『自作解説』によれば“三、四年来、病気でひきこもっていて、手足が不自由なため、筆がれないので、手紙の返事などは、家族のものに代筆してもらっているような、ありさま” だったとのことです。

 

 

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青空文庫のリンク、基本的にタイトルを音順に並べてるだけなので通俗向けか少年向けないし児童向けか、もしくは書評やエッセイなのかわからないんですよね。そういう不便もあり、このような形にしてみました。

 

いや、こんな記事作らなくても各々が順番調べてそのとおりに読んでいけばいいでしょと思われた方。

新しい作品に手を出すまでの「あ、これ無料で読めるけどどこから手を付けたらいいのか調べないといけないんだ……」というワンセンテンスをどれだけみんなめんどくさがっているか!お見通しですよ!気持ちはわかりますので!!

というわけで踏み切った今回のリスト作成です。

 

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実は乱歩作品は著作権フリーということでもうキンドルなんかでもかなり安価な全集が出ているので、そちらはまた別の記事で紹介しようかと思います。(正直、ワンコインで買えるし本文検索なんかもまとめて出来るし挿絵が入ってたりするので何作か読んで気に入ったらキンドルで買ったほうが手間はないですよ)

 

 以下ちょっと補足など

 

Q、全26巻より掲載作品が多い?

A、実は個別の単行本化の機会がなかった、少年向けよりさらに低い年齢層を想定した言うなれば児童向けの作品が存在します。一部の全集やムックなどのみに収録されていたこれらの話も青空文庫に収録されました。

リストでは児童向け作品のタイトル頭に「★」マークをつけています。

(また、全26巻ではありますが短編中編併録の場合もありますので少年向けのみで数えても話数は26話以上です)

 

Q、二十面相が好きです。二十面相の出てくる話以外に興味ありません。二十面相の出てこない話を読む時間と手間が無駄なので教えてください。

A、いやそんなことある?マ?全部読んでくれや。ただ二十面相の出てくる話優先で読みたい人もいると思います。一応ネタバレになるのでこの記事一番下に書いておきました(「続きから読む」でどうぞ)。でも読んでくれや全部。

 

Q、ガキくさい二十面相ものは興味なくて殺人事件の起こる後半の巻が好きだったんだけど作品が足りてなくない?小さいころから少年探偵団じゃなくてそっち読んでた自分変態すぎて草。でも乱歩といえばエログロ幻想猟奇殺人でしょ?二十面相とかマジ子どもだましだし怪盗キッド様しか勝たんわwワラ

A、後半は乱歩名義で書かれた通俗向けのリライトつまり他者による代作だから青空文庫には入ってねぇ~~~~~~~~んだよ!他人の作品です!残念だったな!ヘェ~~~イちゃんと乱歩本人の書いた本読んでから乱歩ファン名乗ってくださ~~~~い??プププ~~~~乱歩だからってエログロだけじゃねぇんだよ馬鹿の一つ覚えがおとなしく子供だまされるかクソして寝ろ

 

 

 

 

このリストですが転載・改良など特に制限しませんので良識の範囲でご活用ください

 

で、

 「怪人二十面相が登場しない作品」については↓

 

続きを読む

二十面相の少年への愛とあの女性への興味の無さ

今回、物的証拠をお見せするのが一番早いと思ったので原作本文をそのまま引用いたします。

 

参照はすべて

図書カード:虎の牙 (江戸川 乱歩)

からとなります。

 

 

 

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魔法博士こと二十面相が(二十面相です)自らの行う魔術ショーで誘拐対象の少年を着せかえる様子。

 

 

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こちらも同じ話から。まんまと攫った幼い男の子を虐げるどころか奇麗に着飾りアジトでもてなす二十面相。

稲垣足穂的な少年愛を感じさせます。稲垣足穂江戸川乱歩とも交友がありましたね。

 

 

以下はおまけです。

最後も同じ話(虎の牙)から。

 

明智に追い詰められた二十面相(明智の姿に変装中)が明智の私宅兼探偵事務所に突入し、あくまで人質目的で妻を誘拐しようとします。

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着替えを一、二枚。

ありがちな悪党みたいに攫った女性をドレス姿に着飾ってやるくらいしてやってもいいのに。本当にほとぼりが冷めたらとっとと帰してしまうつもりだったんでしょうね。

まぁこれらが上の丁重なおもてなしと同じ話(虎の牙)に書かれているので興味の無さが余計に浮き彫りです。大あくびなんかして、原作を通して明智や小林、そして少年たちに対してどれだけ喜色満面で楽しそうにかどわかそうとするか。逐一全部見せたいくらいです。二十面相はまったく無関心なんですよね、この人に対して。

なお、以上が全26巻中唯一の二者の接点です。本当にこれだけです。

「男女アレルギーの腐女子のたわ言だ」と思うなら26巻。読んでごらんなさい。

 

さて、この二人が男同士であればいわゆる「顔カプ」とでも呼ばわれてくさされそうなものですが男と女というだけでこれほど興味のない相手との仲をやたらと勘繰られたりなかば公式のように喧伝されたりして、

 

まこといい迷惑という話です。

 

 

 

余談

今回、件のゲームで再び探偵ネタが取り上げられていると知り再び作品名タグを使用しました。こちらからすると、まさに「これほど興味のない相手との仲をやたらと勘繰られたりなかば公式のように喧伝された」相手です。明智文代に対しての怪人二十面相の無関心さをメディアミックスのみで乱歩を知る人々やもしくはほとんど知らないようなゲームユーザーにも知ってほしいなという考えでタグをつけています。運命の同性に出会った者に異性の茶々入れなど必要ない、というのはご理解いただけるのではないでしょうか?

少年探偵団のリライトものについて、そしてクリエイターへ

江戸川乱歩著『少年探偵シリーズ』ですが、現在では流通されないリライトものが存在します。現在流通しているのは全26巻。つまり27巻以降の作品がそれにあたります。自身もまだコンプリートはしていませんしすべてに目を通してはいません。まだまだです。

リライトものとは要するに江戸川乱歩の著作の中でも所謂通俗ものと呼ばれる小説を児童向けに書き直した作品で元々は『日本名探偵文庫』というシリーズで刊行された後、おなじみ旧ポプラ版装丁の少年探偵シリーズ27巻以降の形で出版されるようになりました。

特徴としては通俗小説のストーリーラインを改変しつつ(殺人描写などは普通に登場します)主要な登場人物の名前を少年探偵シリーズのものに置き換えています。

名義は江戸川乱歩となっていますが、すべて他者による代作です。そのため、全集に収録されることもありません。存在そのものがアウトサイドというかイレギュラーなので現在ではちょっとしたマニアが稀に話題に出す程度かと思います(そもそも乱歩研究において少年探偵シリーズそのものが軽視される傾向ですしね)。

 

一つ誤解されやすいのが(いや誤解といえばリライトもすべて江戸川乱歩本人が書いているというそもそもの超大誤解もかなり根深いのですが)27巻以降のリライトは江戸川乱歩死後に書かれたという誤ったイメージです。

確かに旧ポプラ版のシリーズとして出版されたころには乱歩本人は故人となっていましたが、すでに書いたように『日本名探偵文庫』というシリーズで刊行されていたリライトものは普通に乱歩存命中に書かれ、出版されています。

リライトものが江戸川乱歩の死後に書かれたという認識は誤りです。

 

メディアミックスには口を出さず版権申請も許諾し、名義貸しも快く引き受けた江戸川乱歩ですが、一つ物言いをつけた作品があります。それがリライト版『大暗室』です。

リライトものの隠れた特徴として、実は江戸川乱歩名義での序文(「はじめに」という書かれ方です)が挟まれています。これは『日本名探偵文庫』刊行時からの特徴で、旧ポプラ版になってからもこの序文は残っています。この挨拶も乱歩本人のものではないと思うのですが(ここはちょっとわかりませんでした)基本的に序文における乱歩先生は「この作品が代作であること」は一切触れていません。

それが、一つだけ(※)「他人の手によるものである」とはっきり明言している作品があります。『大暗室』のリライトです。これだけは「他者にお願いして、書き直してもらった」という形で「自作ではない」ことに公に言及しています。

 

その理由はおそらく、怪人二十面相が殺人を犯すからです。

 

世のクリエイターが乱歩メディアミックスを手掛けるとき、不殺の大怪盗・怪人二十面相を殺人鬼に改変する意図はわかります。得られる効果は理解できるからです。乱歩作品の著作権も数年前にすでに失効しました。法の上で何も問題はありません。それが文化の生き残りです。

ただ、私は下品だなと思います。思うだけです。

 

 

 

※といって、最初のほうに書いたようにリライトものをすべて入手し確認したわけではないんですけどね

江戸川乱歩メディアミックスの広報

「乱歩の原作を再現」なのか「乱歩題材の二次創作」なのか

広報の段階ではっきり明言してくれないかなと思います。

 

江戸川乱歩という作家、というかひねくれた語彙選びするなら素材は、横溝正史とかとはもう前提から環境から違うわけで。

クオリティがどうだったとかあのシーンをそう改変したかとかそういう解釈(※)なのか~とかの次元ではなく、名前だけ使った別物をポンと出されるのが珍しくないっていう。

作ってる側はそりゃ作るものは自分たちのもの一つなんでいいのですが、受け手、読者や観客ですね、は数々の地雷原歩かされてうんざりしてるのでお金払って見るようなものはだんだん手が伸びなくなっていきます。

 

という、GWにむけて乱歩の遠隔朗読舞台を企画している劇団がチケットがなかなかはけないという嘆きを目にしての意見でした。

 

江戸川乱歩のメディアミックスにおいては「原作そのまま」というのは明確に売りになります(し、「二次創作」であってもそれと明言し取り扱うカップリングもはっきり公表するのも当然アピールです)。なぜなら江戸川乱歩なので。そういう環境なので。という話でした。

2019年に青プロが企画した朗読劇は時間の関係でかなり短縮されていましたが基本は原作をそのままなぞっていて、素晴らしかったですよ。

 

 

江戸川乱歩の場合は「解釈」でさえ「既存の作家や文化人が語った論説の何を選ぶか」であることが多く、それがまた非常に病的だと思います。三次創作というか。まず江戸川乱歩そのものに向き合ってないと感じます。

ネタバレ/小林少年と不逞の怪人

いろいろな書籍サイトでポイント還元やセール対象になることが多い『小林少年と不逞の怪人』という漫画があります。

もうあらすじとかそういうのは面倒なので結論から書きます。

「小林少年」は少年ではありません。女です。さらに言うと明智文代です。

明智文代が二十面相と結ばれます。そういう作品です。

以上です。

 

どこかでなんらかのセールが始まるたびにうっかり手に取ってショックを受ける原作ファンを目にするのでここに書いておきますね。

 

 

ところで『孤島の鬼』を紹介する人たちはたびたび「同性愛描写があるので注意(※)」と断りますね。それはなぜですか。彼らに疑問を持たず、この記事に疑問を持たれた方はまずご自分の常識や知識や経験と向かい合ってほしいと私は思います。

 

 

まぁ私はヘテロ異性愛)要素地雷のBL好きなのでこれ(孤島の鬼)をBL文脈で紹介されると「苦手な人のことも考えてください!!!!!」ってなりますが・・・(※2)

 

※2

だったら「ヘテロ要素注意」と書いてほしいです、私は

 

 

 

 

 

余談

「勝手にホモに捻じ曲げる」

よく二次創作BLをバッシングする際の定型句ですが、

原作者が同性愛嗜好といわれている作品を異性恋愛ものに改変するのは許されるんですね。

 

余談2

原作で恋人や配偶者のあるキャラクターのBL二次創作を嫌ったリ非難する人って一定数いますが、原作で恋人や配偶者のあるキャラクターの「NL」二次創作ってなんにも言わないんですね。